森林破壊と文明

数千年前、レバノン山脈は、うっそうとしたレバノン杉の森林であり、そのことは世界最古の「ギルガメッシュ叙事詩」を読みますと、よく分かります。
叙事詩の内容は、チグリス・ユーフラテス流域の都市国家ウルクの王ギルガメッシュが、友人のエンキドーと協力して、レバノンの深い森林に住む恐ろしい森の番人フンババを撃ちとり、殺してしまう、というものです。
 フンババを殺した直後に次のようなくだりがあります。「友よ、われらは高く聳える香伯を伐り倒した、その梢が天に届こうという香柏を。さあ、扉を造るがよい。」 
人々は扉で象徴される文明を築くために、恐怖の対象であった森を征服し、その木を切り倒してきました。
フェニキア人は船の建造に、古代エジプト人はピラミッドの建築にレバノン杉を使いました。旧約聖書の列王記によると、ソロモンはレバノン杉をシリアから輸入して、神殿と王宮を建設しました。建築に13年間をかけた王宮は、「レバノンの森の家」と呼ばれました。 
杉と名付けられていますが、学名は Cedrus libani〈ケドゥルス リバニ〉(レバノンのシーダー)で、マツ科ヒマラヤスギ属の針葉樹です。 
古代のインド、ギリシャ、中国でも森林の破壊は行われ、また、ヨーロッパやイギリスの森林も中世末期には壊滅しました。日本では奈良の大仏鋳造のために、大津の瀬田の森林が切りつくされました。
フンババ退治の物語は、森林を破壊する文明そのものの姿です。今もフンババ退治は世界中で行われています。 
ローマ帝国はレバノン杉の伐採を禁じました。しかし、帝国が滅んだあとは、キリスト教マロン派やイスラム教ドルーズ派の人々が、弾圧を逃れてレバノン山中に入って、開墾を行い、羊を持ちこんだ結果、破壊はさらに進みました。 カディーシャ渓谷の「神の杉の森(Horsh Arz el-Rab ホーッシュ・アルツ・エル・エル-ラブ)」には、375本あり、そのうちの2本は樹齢3000年以上、10本は1000年以上とされています。
カディーシャとは「神々しい」という意味ですが、かつて預言者エゼキエルが、「神の園の杉もこれに及ばず 樅の木も、その大枝に比べえず すずかけの木もその若枝と競いえず 神の園のどの木も美しさを比べえなかった。わたしが、多くの枝で美しく飾ったので 神の園エデンのすべての木もうらやんだ。」(エゼキエル書31章8-9 節)と言った神々しいレバノン杉の広大な森林は失われました。
文明そのものの本質を、ギルガメッシュ叙事詩は言い当てているのはないでしょうか。

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