木軸ペンができるまで

木軸ペンができるまで

一本の木軸ペンは、旋盤で木を削るところから始まるわけではありません。

どんな木を選ぶのか。

どのように木取りをするのか。

中心に正確な穴をあけ、真鍮パイプを入れる。

そして、バレルトリマーで端面を整え、旋盤に取り付ける。

四角い木材を丸くし、シャローガウジで外形をつくり、鋭く研いだスキューで最終的な形と寸法を追い込む。

その後、研磨し、クルミオイルと蜜蝋で仕上げ、金具を組み立てる。

最後に一本ずつ確認して、ようやく木軸ペンが完成します。

ここでは、木軸ペンができるまでの工程を、材料選びから完成まで順に紹介します。



1.材料を選ぶ

最初にするのは、木を選ぶことです。

木には、樹種によってそれぞれ違った色、木目、硬さ、質感があります。

同じ樹種でも、木目の出方や色合いは一つひとつ違います。

そのため、単純に「欅だから」「栗だから」という樹種だけで選ぶのではなく、実際の木を見ながら、ペンにしたときにどのような表情が現れるかを考えます。

割れや大きな節がないか、加工に適した状態かどうかも確認します。

木軸ペンでは比較的小さな材料を使うため、一つの小さな木材の中でも、どの部分を使うかによって仕上がりが変わります。

木のどの部分をペンにするのか。

それが最初の工程です。



2.木取り

選んだ木材を、ペンをつくるための大きさに切ります。

この四角い材料を、ペンブランクと呼びます。

バンドソーなどを使って、必要な長さと幅に切り出します。

ボールペンやシャープペンシルなど、使用する金具によって構造や必要な長さが違うため、それぞれに合わせて材料を用意します。

この時点では、まだペンの姿はまったく見えていません。

四角い小さな木材が、これから一本のペンへと変わっていきます。



3.木目の向きと表情を確認する

材料を切り出したら、木目の方向を確認します。

特に複数の木材を使う場合には、組み立てたときに木目が自然につながるよう、材料の向きを確認します。

必要に応じて、材料に印を付けておきます。

旋盤で削り始めれば、四角い材料の形はなくなります。

だからこそ、削る前に木の向きを確認しておくことが大切です。

木目は、完成したペンの表情を決める大きな要素になります。



4.穴をあける

次に、ペンブランクの中心に穴をあけます。

この穴には、後で真鍮パイプを入れます。

重要なのは、できるだけ真っすぐ穴をあけることです。

穴が曲がると、真鍮パイプの位置がずれたり、その後の旋盤加工や組み立てに影響したりします。

完成したペンから見れば小さな穴ですが、この穴が木軸の内部の基準になります。



5.真鍮パイプの下処理

穴の中に入れる真鍮パイプを準備します。

真鍮はそのままでは接着剤との密着が十分でない場合があるため、パイプの表面を適切に下処理します。

表面を荒らして、接着剤がしっかり密着できる状態にします。

この真鍮パイプは、木軸の内部に入るだけの部品ではありません。

後の加工や組み立ての基準となる重要な部分です。



6.真鍮パイプを仮合わせする

接着する前に、真鍮パイプを木材の穴に入れて確認します。

きつすぎないか。

スムーズに入るか。

長さや位置に問題がないか。

一つずつ確認します。

この段階で問題があれば、接着する前に修正します。

接着してしまってからの修正は難しいため、仮合わせは重要な確認工程です。



7.真鍮パイプを接着する

確認ができたら、真鍮パイプを木材の中に接着します。

パイプが木材の中でずれないよう、しっかり固定します。

接着剤が木材とパイプの間に十分行き渡ることも重要です。

ここで固定された真鍮パイプが、後の旋盤加工と最終的な組み立ての中心になります。



8.パイプ内部の接着剤を取り除く

接着すると、接着剤が真鍮パイプの内部に入り込むことがあります。

そのままでは金具を取り付けることができません。

そこで、パイプ内部に残った接着剤を取り除きます。

目立たない作業ですが、完成後の組み立てを確実にするためには欠かせない工程です。



9.バレルトリマーで端面を整える

次に、バレルトリマーを使って木材の端面を整えます。

真鍮パイプを接着しただけでは、木材の端が完全に揃っているとは限りません。

そこでバレルトリマーを使い、木材の端面を真鍮パイプに対して正確に整えます。

はみ出した木材や接着剤を取り除き、木材と真鍮パイプの端面をきれいに揃えます。

この工程は、後の組み立て精度に直接関わります。

端面が正確でなければ、最終的に金具を組み込んだときにも狂いが出ます。

小さな工程ですが、一本のペンの精度を決める重要な工程です。



10.マンドレルとブッシングに組み付ける

端面を整えたペンブランクを、旋盤加工のためにマンドレルへ取り付けます。

ペンの種類に合わせたブッシングを使用します。

ブッシングの順番や向きを確認し、材料を正しくセットします。

ブッシングは、完成するペンの外径を決めるための重要な基準になります。



11.旋盤に取り付ける

マンドレルを木工旋盤に取り付けます。

反対側はテールストック側からセンターで支えます。

材料が安定して回転するように固定します。

このとき、必要以上に締め付けないことも大切です。

材料をしっかり保持しながら、無理のない状態で回転できるようにします。



12.ツールレストの位置を調整する

次に、旋盤用の刃物を支えるツールレストを調整します。

ペンブランクにできるだけ近づけます。

しかし、材料が回転したときに接触してはいけません。

刃物を安定して支えながら、安全に削ることができる位置に合わせ、しっかり固定します。



13.まず手で回して確認する

旋盤のスイッチを入れる前に、ペンブランクを手でゆっくり回します。

四角いペンブランクは、回転すると四隅が大きく張り出します。

そのため、材料のどの位置でもツールレストに当たらないことを確認します。

問題がないことを確認してから、旋盤を回転させます。

これは旋盤作業を始める前の基本的な安全確認です。

旋盤で木を形にする

ここから、四角い木材が一本のペンへと変わっていきます。



14.荒削り

いよいよ木を削り始めます。

最初は四角いペンブランクの四隅を削り、少しずつ丸くしていきます。

この段階では、主にスピンドル・ラフィングガウジなどを使って、大きく材料を落としていきます。

四角い材料を、まず円柱に近い形まで持っていく工程です。

最初から完成形をつくろうとはしません。

まずは材料を安全に丸くし、その後の細かな加工ができる状態にします。

四角だった木材が旋盤の上で回転し、角が消え、丸い木材になっていきます。



15.シャローガウジで外形をつくる

材料が丸くなったら、ペンの外形をつくっていきます。

ここで中心的な役割をするのが、シャローガウジ(スピンドルガウジ)です。

シャローガウジは、軸物の加工に適した刃物です。

木を少しずつ削りながら、ペンの太さや曲線をつくっていきます。

ブッシングを基準にしながら、必要な太さまで削ります。

先端から中央、そして後端へ。

それぞれの部分の太さとつながりを確認しながら、ペンとして自然な形をつくります。

ペンは単純な円柱ではありません。

実際に手に持ったときの感触を考えながら、太さを変えたり、緩やかな曲線をつくったりします。

四角かった木材が、ここで初めて少しずつ「ペンらしい形」になっていきます。



16.スキューで仕上げる

大まかな外形ができたら、最後の寸法と表面を整えていきます。

ここで重要になるのが、スキューです。

スキューは、研ぎ方と使い方によって切削の感覚が大きく変わる刃物です。

一般的なスキューの研ぎでは、両側を合わせた刃先角を35〜40度程度にします。

しかし、重要なのは角度だけではありません。

スキューは、どれだけ鋭く仕上げられているかが非常に重要です。

まずグラインダーなどで基本的な形をつくり、その後、刃先を丁寧に整えます。

そして最後に皮砥を使います。

研磨剤を付けた皮砥に刃先を軽く当て、刃先に残った微細な傷やバリを取り除きます。

こうして丁寧に仕上げた刃先は、剃刀のような鋭さになります。

ここがスキューの面白いところです。

十分に鋭く仕上げたスキューを木に対して適切な角度で当てると、木を押して「削る」という感覚ではなくなります。

刃先が木の表面に入り、木の繊維を切っていくような感覚になります。

つまり、「削る」のではなく、「切る」。

これがスキューによる切削の大きな特徴です。

刃物を木に対して斜めに当てることで、木の繊維を滑らかに切っていきます。

うまく刃物が入ると、木の表面から薄い切りくずが連続して出て、非常に滑らかな木肌が得られます。

0.1mm単位で寸法を追い込む

木軸ペンでは、ここからさらに精度が求められます。

ペンの外径は、単に目測で決めるものではありません。

旋盤に取り付けたブッシングを基準にして、木軸の径を合わせていきます。

特に金具と木軸が接する部分では、わずかな寸法差がそのまま段差になります。

木軸が少し太ければ、金具との境目に段差ができます。

反対に削りすぎれば、木軸が金具より細くなります。

そこで、最後は0.1mm単位で寸法を確認しながら調整します。

一度に大きく削ることはしません。

少し切る。

寸法を確認する。

また少し切る。

そして、もう一度確認する。

この繰り返しです。

鋭く仕上げたスキューだからこそ、ほんのわずかな量を切り取りながら、最終寸法まで追い込むことができます。

刃物で仕上げてから研磨する

この工程で大切なのは、研磨で形をつくるのではなく、できるだけ刃物で形と表面を仕上げておくことです。

シャローガウジで外形をつくる。

鋭く研いだスキューで表面を切る。

そして、0.1mm単位で寸法を追い込む。

この段階でできるだけ滑らかな木肌をつくっておけば、その後の研磨も効率よく行うことができます。

木を削る技術だけでなく、刃物を研ぐ技術も、木軸ペンをつくる技術の一部です。

刃物をどのように研ぐか。

どこまで鋭くするか。

そして、どの角度で木に当てるか。

その違いが、切削面と最終的な仕上がりに表れます。



17.研磨

刃物による加工が終わったら、研磨に入ります。

荒い番手から順番に研磨し、刃物で残った細かな跡を取り除いていきます。

私の場合は、240番から始め、段階的に番手を上げて1500番程度まで研磨します。

一つの番手だけで仕上げるのではなく、前の番手でできた傷を次の番手で消していきます。

研磨が進むにつれて木肌は滑らかになり、木目や杢も次第にはっきりしてきます。

旋盤で削ったときにはまだ見えていなかった木の表情が、ここでさらに現れてきます。



18.クルミオイルで仕上げる

研磨が終わった木軸に、クルミオイルを薄くなじませます。

余分なオイルを拭き取り、木そのものの質感を生かします。

厚い塗膜で木を覆うのではなく、木の手触りを残すことを大切にしています。

オイルが入ることで、木の色や木目もよりはっきりと現れてきます。



19.蜜蝋で仕上げる

クルミオイルで整えた後、蜜蝋を擦り込んで仕上げます。

旋盤を回しながら柔らかい布を当て、摩擦熱を利用して蜜蝋を木肌になじませます。

こうして木の表面を整えながら、木そのものの質感を残します。

触ったときに感じる木の温かさや滑らかさも、この仕上げの大切な部分です。



20.金具を組み立てる

木軸の加工と仕上げが終わったら、ペンとして組み立てます。

ペン先、ノック機構、クリップなど、それぞれの金具を正しい位置に取り付けます。

圧入する部品については、位置を確認しながら慎重に組み立てます。

ここまで来て、ようやく木材が一本のペンになります。



21.最終調整

組み立てが終わったら、各部を確認します。

替芯を入れ、ノックや回転機構が正常に動くかを確認します。

ペン先の出入り、金具と木軸の隙間、軸のガタつきなども確認します。

少しでも気になるところがあれば、そのまま完成にはしません。

必要に応じて調整します。



22.最終仕上げと検品

最後に、一本のペン全体を確認します。

木軸の形。

木肌。

木目。

金具。

それぞれを一つずつ確認します。

傷や汚れがないか、各部が正しく組み立てられているか、実際に手に持ったときの感触に問題がないかを確認します。

必要であれば、再研磨や再調整を行います。

こうして、最初は四角い小さな木材だったものが、一本の木軸ペンになります。

一本のペンに、これだけの工程があります

木軸ペンは、木を旋盤で削って形をつくるだけではありません。

材料を選ぶ。

木取りをする。

木目の向きを確認する。

穴をあける。

真鍮パイプを下処理し、仮合わせをする。

接着し、パイプ内部を整える。

バレルトリマーで端面を正確に仕上げる。

そして、マンドレルとブッシングに組み付け、旋盤に取り付ける。

四角い材料を丸くし、シャローガウジで外形をつくる。

さらに鋭く研いだスキューで木を切り、0.1mm単位で寸法を追い込む。

そのためには、刃物そのものをきちんと研いでおかなければなりません。

35〜40度程度の刃先角。

丁寧に整えたベベル。

そして皮砥で仕上げた、剃刀のような刃先。

その刃先を木に当てると、木を「削る」のではなく「切る」感覚が生まれます。

こうして形と寸法を整えた木軸を、さらに研磨する。

クルミオイルをなじませ、蜜蝋で仕上げる。

そして金具を組み立て、最後に一本ずつ検品する。

一本の木軸ペンの完成までには、これだけの工程があります。

四角い木材が旋盤の上で少しずつ丸くなり、木目が現れ、形が生まれる。

そして最後には、手の中に収まる一本のペンになる。

その一つひとつの工程を大切にしながら、木軸ペンをつくっています。

槻語 ― つきかたり

木を削ると、それまで見えていなかった木の表情が現れます。


木のお店 リーベルクラフト

ウッドターニング(木工旋盤)を用い、木が持つ自然の表情や手触りを大切にしながら、自然でシンプル、やさしさに満ち一つひとつ心を込め手作りしています。内容は1木軸筆記具、2木の器、3木の道具・小物、4木のインテリア。 「リーベルクラフト」の名前で、Creemaにお店を出しています。 https://www.creema.jp/creator/3510520 jujuboisjuju@gmail.com